2011.06.29 (Wed)
徳
下半期の目標。
ボキャ天でインパク知を狙う。
ムラコシです。
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はじめに。
先日発行されたROKURO8号内に掲載された作品の一部に、多少規模が大きめの編集ミスが見つかりました。
そのためROKUROでは、7月上旬を目処に急遽8号の改訂第二版を刊行することとなりました。
つきましては、先日の文学フリマ等でROKURO8号をお買い上げいただいた皆様を対象に、改訂版を無料で差し上げることとなりましたので、お知らせいたします。
誠に申し訳ございません。
自分は校正担当なので責任感じてます。
へこんだ。
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今日はマジメに行こう。
突然だが、「徳を積む」ということについて考えた。
【More・・・】
人は何のために徳を積むのか。徳を積んでどうするのか。徳を積んで何を得るのか。怪しげな新興宗教では、「徳を積む=信者を増やす」などと勘違いをし、友人関係はおろか、あまつさえ血縁関係まで崩壊させかねない勧誘活動を信者に強制していると聞く。(しかも信者本人は強制されていると気づいていないのだから始末に終えない。)信者を○人増やせば肩書のついた地位に就けるというシステムすらあるらしい。これでは徳を積んでいるのではなく、単に教団の利益を積む手駒にされているにすぎないから論外だ。
本当は、何かのために徳を積むなどと考えてはいけないのだろう。そもそも「徳を積もう」と意識した瞬間、それは欲となり、煩悩と本質的に変わらぬ下卑たものへと落ちる。
徳のある人は、結果としていつの間にか徳が積みあがっている人を指すのだろう。
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光明子(こうみょうし)という歴史上の人物をご存知だろうか。大仏建立で有名な聖武天皇のお后様で、光明皇后という呼び名でも知られるが、この人にこんな逸話がある。
光明子は仏教に深く帰依し、「悲田院」や「施薬院」などの施設を設置し、都の庶民への慈善活動を積極的に行ったことで知られているが、無料の浴場を設け、貴賎の別なく人々の背中を洗い流したという話も有名である。
その日も自ら先頭に立って背中を流していた光明子のもとに、ついに通算千人目の男がやってきた。しかしその男はらい病(ハンセン病)で皮膚をひどく患っており、体中にできた腫れ物の膿を吸い出して欲しいと頼んだ。周りの者はその話を聞いてさすがにうろたえたが、光明子は顔色一つ変えず、自ら進んで何とその腫れ物の膿を吸い出したという。
するとその男はまぶしい光を放ち、「あなたは仏の垢を除いてくれた、ありがとう。」と言い残し、突然姿を消した。
その男の正体は阿閦如来(あしゅくにょらい)という仏で、光明子の行いはついに仏に認められた、というお話。
何で急にこんなことを思い出したかというと、先日ネットでこんな話を見つけたからだ。
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とある売れない女性アイドルグループの握手会。
握手会と銘打っているものの、下手をするとスタッフの数の方が多いほど、肝心の客はまばらな状態。メンバーも暇をもてあまして、昔からよく来る常連のコアなファン数人と雑談中。底辺芸能人の悲哀に満ちたイベントの気まずく気だるいオーラがあたりを包む。
そんな中、CDを手にふらふらと近づいてくる新たな客。
完全に膨張しきった肥満体に加え、皮膚病なのか体中赤い吹き出物だらけの、言い方は悪いが誰でも一目見た瞬間うろたえるレベルの男。事実スタッフも顔がひきつっている様子。
その時、メンバーの一人がためらいもせず、満面に笑みをたたえ、
「CD買っていただいたんですか、ありがとうございます!」
と、わざわざ前へ進み出てその男の吹き出物だらけの手を取り話しかけた。
その予想外の大歓迎振りに男は完全に舞い上がってうまく話せないのだが、彼女はどこから来たんですかとか、私達の歌好きですかとか、かなり長く話していたらしい。
ずっと手を握ったまま。
たぶん幸せのかけらもない一生を黙々と耐えていくだけのこいつにとって、
この日は一生の思い出になるんだろうなと考えたら 涙出てきた
涙隠そうと横向いたら司会のお姉さんもハンカチで涙ぬぐってた
と、この書き込みは結ばれていた。
仕事なんだから当然だろ、と思う向きもあるだろうが、このグループ、ちなみに今は握手会をやっていない。というよりもうできない。
なぜなら、件の彼女がファンと話しこんでしまうせいで、いつまでたっても握手会がおわらないからだそうだ(笑)
つまり、彼女は常日頃から本当にファンと交流するのが大好きな人間で、仕事だからやらされているなんて感覚など微塵も持っていないということと、
そして、いつまでたっても握手会が終わらないほど、今はこのグループのファンが増えてしまったということがわかる。
お察しのいい方ならもうお気づきだろう。
このグループの真ん中の人のことである。
自分がこのグループの、特に彼女のファンである理由がお分かりいただけたであろうか。単にかわいいからとか、ウケ狙いでファンやってるとか、そういうのでは決してない。
ファンというより、ある意味尊敬する人物の一人として位置づけていると言った方がいい。
明らかにこの人は、徳を重ねてここまでになった人なんだろうなあと、思う。
確かに中田なにがしの曲でファンが増えたことも事実だろうが、彼女のこういうところが好きでファンになった人も多いのではないだろうか。
最近すっかりこのグループから遠ざかってしまっているが、また少し聞いてみたくなった。
なんか最近、握手会をいつもやってる、ファンとの距離が近いことが売りの48人組のアイドルが流行ってるらしいが、
彼女達の中にもこういう人、すなわち、
マグロ解体ショー出演だのわけのわからぬ営業までこなして長年辛酸を舐めながら、
その人間性で徐々に多くのファンがついてくるようになった人は、いるのだろうか。
そして、最近ネットでは彼女のことをゴリラだのなんだのほざく輩が多いようだが、
そいつらのうちどれだけが、彼女をゴリラ呼ばわりできるほどの人間性を有しているのだろうか。
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この間、ほほえましい高校生たちの話をしたばかりだが、最近こういうちょっといい人たちとやたらと遭遇する。
一昨日の話だが、とある駅で、どう見ても
東京生まれヒップホップ育ちで、悪そうな奴は大体友達って感じの金ネックレスジャラジャラの兄ちゃんが、
「うわマジェ、エスカレーター動いてねえし!」
とぼやいているところに通りがかった。
我慢して階段使えよと思って振り向いたら、その彼が
手押し車でよたよた歩くおばあさんを連れているのに気づいた。
「節電だってさ。どうする、おぶったげよっか?」
と言っていたので、裏にエレベーターがあることを教えてあげたら、兄ちゃんは
「あーどもすいませんご丁寧にェ」とやたらとペコペコ恐縮していた。
彼もああ見えて、いつのまにか徳がたまっていくタイプらしい。
「ばーちゃんここ狭えから気ィつけてよ」「はいはい」と言いつつ去ってゆく凸凹な二人。
いい孫を持ったね、おばあちゃん。
さて次回は、自分はこのとき電車に乗ってどこへ行こうとしていたのか、その時の話でもしようと思う。
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